江戸時代中ごろに現在の敦賀市に誕生した小藩の歴代藩主や領地の人々にまつわる資料が並ぶ特別展=20日、同市立博物館

 江戸時代中ごろに誕生した小浜藩の支藩で、現在の福井県敦賀市東浦地区の一画に陣屋が置かれた小藩に焦点を当てた特別展「敦賀藩物語」が10月20日、同市立博物館で始まった。歴代藩主や領地の人々にまつわる資料約70点を展示している。12月4日まで。

 嶺南地域を支配していた小浜藩の支藩は敦賀湾沿岸の二つの丸い山の麓に陣屋が置かれたため「鞠山藩」と通称された。1869(明治2)年の版籍奉還で8代藩主・酒井忠経が敦賀藩知事に命じられてから9カ月ほどは公式に「敦賀藩」と呼ばれた。

 鞠山藩に関わる人が作成したと考えられる敦賀湾周辺を描いた「敦賀真景図」や初代藩主・忠稠が藩主就任以前に小浜藩2代藩主の父・忠直に宛てた書状などを紹介。「鞠山役所出勤ニ付願書」では、「大庄屋役」を命じられ年貢の徴収などに携わっていた農民5人が、鞠山藩に給与の支給を求めている。

 忠経が明治新政府に出した「敦賀藩改名願書」は、敦賀港を支配している小浜藩に行くべき命令が敦賀藩に来てしまうため、鞠山藩に改名したいと訴えている。願書は1870(明治3)年に認められ、名称は改められた。同年9月には小浜藩と合併され、鞠山藩は消滅した。同館の学芸員は「あまり知られていない小藩の歴史を目撃してほしい」と話していた。

 22日と11月12日の午後1時半から、学芸員による展示解説がある。10月29日午後2時からは市きらめきみなと館で、若狭路文化研究所の所長による記念講演会がある。参加無料で当日先着100人。

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