熊川宿の歴史ある町並みを歩いていると、まるで別の時代に足を踏み入れたかのような気持ちになります。古い建物や静かな通り、昔ながらの風情からは、かつて日本海と京都を結ぶ歴史街道「鯖街道」沿いの重要な宿場町として栄えた当時の面影を感じることができます。

    木彫り教室が行われている工房の一つ

 しかし、熊川宿の魅力は、町並みに歴史の面影が残されていることだけではありません。日本有数の木彫りの町で受け継がれてきた伝統工芸が、この地に新たな拠点を見つけています。現在では、熟練の木工職人の指導のもと、木彫り体験を通して、その独自の伝統工芸の魅力を自らの手で体感することができます。
 この2時間の木彫り体験では、木彫りの基本を一から学ぶことができます。簡単な形を彫るところから始まり、さまざまな木工道具の使い方や木目の見方など、木と向き合いながら作品を形にしていくための基礎を身につけます。さらに、道具の手入れや研ぎ方についても学ぶことができ、伝統工芸を支える職人の技術や知識をより深く知る機会となっています。


木彫師・新野さんによる、見事な作品の数々

 この体験の中心となるのが、木彫師の新野雄一さんです。新野さんが木彫りの道に進むきっかけとなったのは、幼い頃から自宅にあった欄間彫刻の美しさに魅了されたことでした。敦賀工業高等学校で建築を学んだ後、木彫りの町として全国的に知られる富山県井波へ渡り、5年間にわたって師匠のもとで修業を積みました。
 現在は熊川宿に工房を構え、仏像や精巧な社寺彫刻をはじめ、表札や小さな作品まで、幅広い木彫作品を手がけています。長年にわたる修業で培った技術、木目を見極める深い知識、そして一つひとつの作品に丁寧に向き合う姿勢が、新野さんの作品に息づいています。


体験について


木彫師の新野さんが、生徒の木刀の仕上げを手伝っています

 この2時間の木彫り体験では、簡単な形を彫るところから、さまざまな木工道具の使い方、木目の見方まで、木彫りの基本を一から学ぶことができます。また、道具の正しい手入れや研ぎ方についても学ぶことができ、伝統工芸を支える職人の技術や知識への理解を深めることができます。

 教室は月2回、職人の工房、または近隣のレンタル工房で開催されています。初心者でも参加できるよう、基本から丁寧に指導してもらえるため、木彫りの経験がなくても安心して参加できます。

生徒が自身の作品を教室に持参。精巧な日本の女神の浮き彫りから、教室で身につけられる技術と創作の可能性が伝わります。

 私は以前に少し木工の経験がありましたが、今回は初心者として他の参加者と同じように教室に参加しました。一方で、経験のある方も歓迎されており、自分で考えたデザインを持ち込んで、工房でオリジナル作品の制作に取り組むこともできます。


必要な道具はすべて用意されているので、手ぶらで参加して、すぐに木彫りを始めることができます



第1回目 ― シンプルなところから

 最初の教室では、一見するととてもシンプルな「球」を彫るところから始まります。一見、木彫りのスタートとしては意外に思えるかもしれませんが、滑らかで丸みのある形を作ることで、木彫りに必要となるさまざまな基本技術を身につけることができます。木目の見方や、彫刻刀を当てる角度・力加減を学びながら、少しずつ木を削り、均一な形へと仕上げていきます。

六角形の木材を使い、シンプルな球の彫り方を学びます

 単に決められた形に沿って彫るのではなく、一つひとつの切り込みに木がどのように反応するのかを感じながら作業を進めていきます。レッスンの終わりには、ただの木の塊が一つの球へと姿を変え、より複雑な形を彫る際にも応用できる基本技術を、楽しみながら身につけることができます。



 まず、木材に鉛筆で球の基本的な形と大きさを描き、中心となる位置もしっかりと印をつけます。これを目印にしながら、いよいよ木を削り始めます。講師が作業の過程で丁寧に指導してくれますが、線を引いたり、木材に印をつけたりする作業は自分自身で行います。
 こうした実際に自分の手を動かして取り組むスタイルだからこそ、最初から自分自身で作品を作り上げていく感覚を味わうことができます。また、木の塊から少しずつ形が生まれていく過程を実感しながら、形がどのように作られていくのかをより深く理解することにもつながります。


    
 約30分ほど木を彫り進めると、まだいびつではあるものの、少しずつ球の基本的な形が見えてきます。ポイントは、一度に大きく削ろうとせず、少しずつ慎重に彫り進めること。木目に沿って削りながら、こまめに木材を回して形を確認することで、バランスの取れた球に近づけていきます。仕上がりに近づくにつれて、より細かく軽く削ることで、少しずつ形を整えていきます。

制作のはじめから完成まで:球が形になるまで

 

第2回目の教室



 第2回目の教室では、木工に欠かせないもう一つの大切な作業、「道具を研いで切れ味を保つこと」に取り組みました。今回は、砥石を使った彫刻刀の研ぎ方を教えていただき、刃を適切な角度に保ちながら、砥石の上を一定の動きで滑らせ、きれいで鋭い刃先に仕上げる方法を学びました。研ぎは一見すると木彫りの中では小さな作業に思えるかもしれませんが、木を扱う職人にとって欠かせない重要な技術の一つです。



 よく研がれた彫刻刀は、より細かな動きや正確な作業を可能にするだけでなく、木を彫る作業そのものをよりスムーズで楽しいものにしてくれます。こうした昔ながらの技術を実際に学ぶことで、木彫り職人が日々の道具の手入れにかける丁寧さや、その大切さを改めて実感しました。


  切れ味の鈍った刃から、研ぎ澄まされた道具へ

 この教室の魅力は、自分で作品を彫ることを学ぶだけではありません。他の参加者がどのような作品に取り組んでいるのかを見ることで、同じ木彫りという技術でも、一人ひとり異なるアプローチがあることを知ることができます。
  また、師匠である新野さんや弟子の方から直接学べることも、この教室ならではの魅力です。それぞれの経験や技術に触れることで、作品づくりへの新たな刺激やインスピレーションを得ることができます。

体験に持参した西洋式の彫刻刀の一部

 木彫り教室は、技術や知識を共有する場でもあります。第2回目の教室では、私が普段使っている西洋式の彫刻刀を持参し、西洋と日本の木彫りの技法やアプローチの違いについて教えていただきました。それぞれを比較することで、異なるスタイルの技術や、そこに受け継がれてきた伝統への理解をより深めることができました。

 

自分だけの木製パン皿を彫ろう

  

 木彫りを気軽に体験してみたい方には、新野さんが開催する木製パン皿づくりの体験もおすすめです。約2時間かけて、彫刻刀を使いながら、直径18cmの丸型または角型の木製パン皿を自分好みに仕上げていきます。木の自然な木目を活かしながら、自分で模様をつけることもでき、世界に一つだけのオリジナル作品を作ることができます。



 こちらの体験は、記事の最後に掲載している詳細から、じゃらんnetを通じて直接予約することができます。


木彫りと熊川宿を楽しむ、特別なひととき

 木彫りを気軽な趣味として始めてみたい方にも、より本格的に技術を身につけたい方にも、この体験は木彫りの世界への充実した入門となります。木彫師の新野さんの指導のもと、基本的な技術を学び、道具の使い方や木彫りの技法について実践的な知識を身につけながら、自分の手で作品を作り上げる楽しさを味わうことができます。
そして、この体験をさらに特別なものにしているのが、その舞台となる熊川宿です。かつて宿場町として栄えた歴史ある町並みの中で、日本の木工文化と深くつながる木彫りを学びながら、ゆっくりと流れる時間と昔ながらの風情を楽しむことができます。木と向き合う時間を過ごした後は、工房を出て、熊川宿の静かな町並みや歴史を感じさせる建物、豊かな自然を散策するのもおすすめです。木彫りに興味がある方にとって、伝統工芸の魅力だけでなく、歴史ある熊川宿の雰囲気も一緒に味わえる、特別な体験となるでしょう。
 

木彫教室・木彫体験情報
体験の予約方法
 以下のページより、まずはお問い合わせください。
  https://www.niinochoukoku.com/

〇体験料金::彫刻教室(定期開催):2,500円(税込)
       ※複数回通う方向けの教室のため、基本的に道具は各自でご持参いただきます。
       彫刻教室(単発参加):5,000円(税込)
       ※道具の貸し出しを含みます。
〇体験時間:約2時間
〇材料:道具貸し出し料込み
〇参加人数: 1名から参加可能です。
〇開催場所: 福井県三方上中郡若狭町熊川16−36

木のパン皿彫刻体験
〇体験内容
 パンを載せられるくらいの直径18cm(丸皿or角皿)のお皿に彫刻刀で彫って、お好きな木目の模様を仕上げていきます。周囲を自然に囲まれた静かな空間で没頭できる体験です。
 彫刻刀を用いて好きな模様を仕上げていきます。道具によって木目も変わってくるので、様々な模様が現れるのも楽しいお時間です。
〇体験時間:13:30~15:30(約2時間)
〇体験料金:おひとり様 6,000円(税込)
〇材料:道具貸し出し料込み
〇開催場所: 福井県三方上中郡若狭町熊川16−36
〇参加人数: 1名から参加可能です。

 

福井県地域おこし協力隊
敦賀・若狭エリア魅力発信ライター ブライアン・キース・イーストレイク
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