• 地蔵にふんし区内を走る男児ら=11日、敦賀市赤崎
  • 「力めし」と呼ばれるおにぎりで腹ごしらえする男児
地蔵にふんし区内を走る男児ら=11日、敦賀市赤崎

 福井県敦賀市赤崎区で室町時代から続くとされる伝統の奇祭「山の神講(かんこ)」が12月11日、行われた。寒風が吹く中、上半身裸の男児3人が元気よく区内を走り、山の神様にお供え。帰りは顔や体を白く塗り地蔵に変装して再び疾走し、集落の平穏を祈った。

 赤崎には昔、顔はサル、体はトラ、尾はヘビの妖怪「ヌエ」がおり、田畑を荒らしていたという。山の神講は、村人が神仏に祈祷(きとう)して退治し集落を守った伝説が由来とされ、山の神様が「地蔵に化ければヌエが嫌がり近付いてこない」と教えてくれたことから、お礼にお供えしたことで始まったといわれている。集落の平穏のほか子どもたちの無病息災なども願う。

 区内の男児が当番宅の「講宿(こうやど)」から山際の大日如来を祭る大日堂まで走り、お供え物を届ける習わし。講宿は新築や改築したばかりの家が選ばれ、今年は濱井さん宅が務めた。大将を務める赤崎小3年から1年の3人の男児が参加。中学生2人がサポートした。

 すりつぶした米とお神酒を混ぜた「しとぎ」を作り、「力めし」と呼ばれるおにぎりで腹ごしらえ。ふんどし姿の男児は腰にしめ縄を巻いて「しとぎ」を持ち、白い短パン姿の2人はわらを三つ編みにした「つと」を持って出発した。

 男児らは「やーまのかんこのまーつりやい」「そーりゃ、なーんのまーつりやい」と声を張り上げ、例年より遠回りの約1キロのルートで大日堂まで上った。

 到着すると、敷地内の松の根元に「大将!」「1番!」「2番!」「3番!」と叫び、しめ縄や、つとを投げた。お堂内でお供えと参拝を済ませると、真っ白な「しとぎ」を左手で顔や体にべとり。ヌエにいたずらされないよう、地蔵に扮(ふん)して帰路に就いた。

 沿道では多くの区民が「頑張れ」と拍手で声援を送っていた。男児は「初めての大将で緊張したけど、無事完走できてよかった。来年も寒さに負けず頑張りたい」と話していた。

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