「被災地や住民の現状を知ってほしい」と話す林さん=小浜市役所

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を題材にした朗読劇「まつろわぬ民2022~更地のうた~」が12月9日、福井県小浜市まちの駅・旭座で上演される。主催する東京の演劇集団「風煉(ふうれん)ダンス」代表で作・演出を務めた林周一さんは「大災害が忘れられないよう、被災地や被災した人たちの現状を知ってほしい」と話している。

 12月8日の名古屋公演を皮切りに、全国8カ所を巡る。歌手の白崎映美さんら4人が出演する朗読劇と、白崎さんのライブの2部構成。風煉ダンスが2019年に小浜市田烏のイベントで野外音楽劇を披露した縁で、県内は同市での公演を決めた。

 同団は14年に音楽劇として「まつろわぬ民」を制作、東京や東北各地で上演してきた。震災から10年となった昨年、東京で開かれるイベントに合わせ朗読劇として改めて書き下ろすことになり、林さんらが再度被災地を訪問。帰還困難区域が残る福島県浪江町や双葉町で、がれきが山積みだった震災直後から一転、家屋までもが解体撤去され更地が広がる光景や町民の現状を取材し、劇に落とし込んだ。

 更地になった架空の街で、白崎さん演じる老婆や震災で妻を亡くした家屋解体作業員などで物語を展開する。大がかりな演出を行った音楽劇とは打って変わり、今回は舞台に出演者が立つだけのシンプルな公演。林さんは「言葉がより鮮明になると思う。苦渋の決断で家を取り壊した人、今も故郷に帰れない人がおり、大災害の影響が続いていることを語り伝えたい」と思いを込める。

 小浜公演は午後7時開演。チケットは一般3千円(当日3500円)、学生千円(同1200円)。問い合わせは制作会社マルメロ=電話03(5627)7583。市内ではまちの駅、メガネの正視堂、コミュニティーカフェ金四郎で販売している。

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