さまざまな掘削技術を紹介する特別展「掘る!未知の世界を拓く掘削技術」が8月3日、三方上中郡若狭町の県年縞博物館と、隣接する若狭三方縄文博物館で始まった。水月湖でのボーリング調査で使われた器具と同じものを用意し、常設展示の水月湖年縞を採取した方法を解説。縄文時代の石器から北陸新幹線のトンネル工事のドリル先端まで多種多様な道具が並び、人々の暮らしを支えてきた技について掘り下げている。10月3日まで。
産業や文化の発展に大きく関わる「掘る」ことに焦点を当て、知恵と技術を知ってもらおうと企画。トンネル掘削で取り出した地層や道具など54点を集めた掘削技術編は県年縞博物館で、町内の国指定史跡「西塚古墳」の発掘調査を基にスコップなど11点を展示する考古遺跡編は縄文博物館で開いた。
掘削技術編の目玉は、日本で開発されたという道具「水圧式ピストンサンプラー」。太い筒(ケーシング)の中に道具を仕込み、水圧を利用して小さい筒(インナーチューブ)を湖底に突き刺し、試料を引き抜く技術という。水月湖ではこの方法で本格的なボーリングが4回行われたほか、ケーシングを入れるタイミングを工夫しきれいに採取したことをパネルで解説している。1991年に初めて水月湖で年縞を掘削した「マッケラスピストンコアラー」や堆積したての軟らかい年縞を採る「リムノスコアラー」などの道具もある。
縄文時代に狩りのための落とし穴を掘るときに使われた打製石斧のほか、北陸新幹線の深山トンネル(敦賀市)掘削工事で、ダイナマイトを挿入する穴を開けたドリル先端も展示。地球のマントルに迫り、内部や成り立ちを調べるため海底を掘る地球深部探査船「ちきゅう」も紹介し、硬い地層を砕くドリル先端のサンプルを並べた。
縄文博物館には、2020年10~12月、21年6~8月の西塚古墳の発掘調査の写真をはじめ、実際に使われた表土をそぐ「鋤簾(じょれん)」や排水のための「柄杓(ひしゃく)」などがある。
企画した学芸員は「普段日の目を浴びない掘る行為に注目してもらいたい。水月湖年縞の展示が高い技術力の上に成り立っていることを知ってほしい」と話していた。
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